どうすればいいのか分からないとき、私たちは頭の中で何度も考えます。
正しい選択はどちらだろう。
失敗しないためには、何を選べばよいのだろう。
考えれば考えるほど、選択肢は増え、かえって分からなくなることがあります。
そんなとき、頭だけではなく、身体の感覚にも耳を澄ませてみると、少し違う景色が見えてくるかもしれません。
ある話を聞いたとき、胸がふっと軽くなる。
ある場所を思い浮かべたとき、呼吸が深くなる。
反対に、断る理由は見つからないのに、身体がこわばる。
言葉では説明できないけれど、なぜか重たく感じる。
身体は、とても静かな方法で反応しています。
私たちは、筋道を立てて説明できるものを信じようとします。
周囲が納得する理由。
損をしないための根拠。
将来に役立つという保証。
けれど、自分にとって大切な選択のすべてが、数字や言葉だけで決まるわけではありません。
頭は、これまで得た知識や経験を使って答えを探します。
それはとても頼もしい力です。
一方で、身体は、今この瞬間に感じている安心や緊張を教えてくれます。
どちらか一方だけが正しいのではありません。
考えることと感じること、その両方を大切にすることで、自分に合った答えが少しずつ見えてきます。
たとえば、二つの選択肢で迷っているなら、それぞれを選んだ自分を静かに想像してみてください。
その場所にいる自分は、どんな呼吸をしているでしょう。
肩に力が入っているでしょうか。
お腹の奥に、少し安心する感覚があるでしょうか。
すぐに明確な答えが出なくても大丈夫です。
身体の感覚は、小さすぎて気づきにくいことがあります。
普段から我慢することに慣れている人ほど、自分の違和感を見過ごしてしまうこともあります。
だからこそ、日常の中で小さな感覚を確かめる練習が役立ちます。
今飲みたいのは、冷たいものか温かいものか。
この服を着ると、落ち着くか落ち着かないか。
今日は人と話したいのか、静かに過ごしたいのか。
正解を探すのではなく、心地よさを感じ取る。
その積み重ねによって、自分の感覚への信頼が少しずつ戻ってきます。
長い間、誰かの期待に応えることを優先してきた人は、自分の感覚を選ぶことに不安を覚えるかもしれません。
わがままではないだろうか。
間違っていたらどうしよう。
けれど、身体の声に耳を傾けることは、衝動のままに動くこととは違います。
自分を置き去りにせず、丁寧に確認することです。
違和感があるなら、すぐに断定せず、少し時間を置いてみる。
安心を感じるなら、その理由をゆっくり見つめてみる。
身体は未来をすべて知っているわけではありません。
それでも、今の自分にとって無理があることや、ほんとうは望んでいる方向を、言葉より先に感じ取っていることがあります。
迷いが深い日は、答えを急いで出さなくても大丈夫です。
胸に手を当て、ゆっくり息を吐いてみてください。
頭の中の大きな声が少し静まったとき、その奥にある小さな感覚が見えてくるかもしれません。
答えは、遠くにあるとは限りません。
あなたの呼吸や、胸のゆるみや、お腹の奥の静けさの中に、すでに小さな方向が示されていることもあります。
今日、何かを選ぶ場面があったなら、正しいかどうかだけではなく、その選択を思い浮かべたときの自分の感覚にも、そっと耳を澄ませてみてください。

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